■金曜の夜、IMI時代にREALOSAKA(今は亡き。REALTOKYOは現存)でお世話になったAさんと、同じくIMIの先輩Mさんのおふたりの事務所を訪ねる。Aさんとは今年の始め、私が上司と年始の挨拶回りで会社の近くを歩いていた時バッタリとお会いしたのだった。そのときAさんの自宅がうちの会社の向かいだということがわかりビックリ。何たる偶然。で、同じ通り沿いに事務所を開かれたということで、「また一緒にごはんでも」と誘って頂いていて、それが実現したのだった。

■「郵便局のところまで来たら電話して」と言われていたので電話をすると、「その向かいのビルやねんけど」「あー1Fに○○って書いてあるビルですか」「そうそう、その3F」「了解です、上がります」というやりとりがあって、通りを渡った後、ビルに入って3Fまで上がるとそれらしい事務所がない。おかしいな、と思って1Fに戻り確認してみると、さっき通りの向こうで確認したビルと違うビルだ。すごいな。どう考えても間違えようがない距離だ。26年間付き合ってきたがまだまだビックリ要素満載の自分に半ば感心しながら隣のビルへ。で、ありました、Aさんの事務所。おふたりが仕事を片付けられた後、東心斎橋のビールが何十種類もあるお店に連れていってもらう。ビールはあまり飲めない私が、死ぬほどおいしいと思うベルギービールでした。

■「では、大阪の新天地へ」というAさんのひと声でミナミを南下。ディープ大阪ゾーンに突入し、しばらく歩くと目の前に味園ビルが現れた。噂には聞いていたが味園、渋すぎる。ものすごい昭和感漂うたたたずまいが、見てもいないのにかつての栄光をフラッシュバックさせる。後ろには大御所感を出しまくっているキャバレー・ユニバースのネオン。見てもいない過去にタイムスリップ。

■足を止めずに中へと入っていくAさんの後を追い、ビルの中の1軒のバーへ。カウンターだけの小さなお店で、店の片隅では小さなミラーボールがくるくると回っていた。「Bar Black Panther」というイカつい名前とは裏腹に、脱力メルヘンな感じの内装がかなりすてきなお店だった。AさんがMさんに「もっとハードコアな感じの店と思ってた?名前から」と言っていた。それを聞いていたマスターがすかさずBGMをディズニーの7人のこびとの音楽に変え、ギャップに追い討ちをかけていた。

■その後はMさんがかなりのAORマニアだと知ったマスターが、めまぐるしい勢いで次々とレコードを変え、Mさんはそのレアな音源にすっかり心奪われていた。マスターは、「これ、うんちくを言えば兵藤ユキのだんな、ヒロスケ」とか「これは松崎しげるで“愛のメモリー”、じゃなくてその前にアレンジ違いで出してた“愛の微笑”」とか「じゃ女の子用に松田聖子かけましょ」とか、Mさんも「アイドルもののバックが意外に大物ぞろいであなどれないんですわー」とか「松任谷正隆がええ仕事しとるんですわー」とか、素人の私には何が何だかわからなかったが、その状況が異常におもしろかった。

■そしてAさんが「じゃ最後にふさわしいのを」とマスターにお願いすると、かけてくれたのは「Blowin’In The Wind」だった。「誰が歌っているでしょう?」という質問に、カウンターに座っていた常連らしい男の子が「ボブディラン」と答えると、マスターは「こんなにヘタじゃない(笑)...荒くれものです」と言い、Aさんが「ああ、泉谷しげる」と答えて笑った午前2時すぎ。異常に楽しい夜。年に一度思うか思わないかの「大阪好きかも」と思う夜。
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